習熟度別授業の是非
中学生にせよ、小学生にせよ、上の学校への進学を考え、どの学校に行くのが良さそうなのか、様々な観点で検討すると思います。家から通学が可能かどうかという観点をはじめにいろいろ考えると思いますが、今回話題とする「習熟度別授業」とか「能力別授業」を採用している学校であった場合、どう思われますか。
学校によっては、授業だけではなく、クラス分けも成績順にトップから35位までがA組、36位から70位までがB組・・・というようにしているところもあるかもしれません。
また、多くの私立高校では偏差値50前後の一番層が厚いクラスが大半を占める中に、1,2クラスだけ特別進学コースを設け、高偏差値の生徒が混ざるようなことが多いです。
こういう場合は、目指す大学のレベルもかなり異なることから、同じ授業構成では厚い層も高偏差値層もどちらも不幸になるのだろうと思います。
私は塾を始めるまで、実はこの「習熟度別授業」には理解がありませんでした。それには主に2つの理由がありました。
1つは、習熟度が低いと判定された生徒にとっては、高いレベルの授業を受けることができなくなり、せっかく受験で頑張って入った学校の最高の環境からはじかれてしまうように思われること。はっきり言って損した気分になってしまうということです。
もう一つは、習熟度が高いクラスはエース級の先生から授業をしてもらえるが、低いクラスにはそういう先生が配置されにくいであろうと思うこと。
これらの危惧から、習熟度別授業をしている学校に少なくとも我が子を行かせたいとは思えなかったのです。
ところがです。
自分で集団授業をしてみますと見方が変わります。少なくとも、生徒になるべく一人でも多く理解をしてもらおうと考えますと、習熟度別授業は避けられない。特に過去問演習のような授業をするときにはそれを強く感じます。
100点満点で50点の生徒と60点の生徒が大半であれば、そのレベルにあった授業をすることが簡単にできるわけですが、30点と70点の生徒がいた場合、どちらに合わせて良いのかわからなくなります。一般的には、授業を受けている方のトップクラスに合わせて授業の内容、扱う問題のレベルは決められていると思います。しかし、それでは30点の生徒は全くついていけません。場合によっては、自分が正解しようとすら思っていないいわゆる「捨て問」と呼ばれる難問の類しか解説してもらえない可能性さえあるのです。
授業を行う方は、30点の生徒にぜひ次回は正解してほしいと思う易しめな問題を解説してあげたいと思う一方で、そういう問題は70点の生徒はすでに正解しているため、その生徒が正解できなかった問題を取り上げてやる必要が出てくる。このバランスが非常にとりにくいわけです。
したがって、究極は個別指導ということになりますが、学校の場合そうは言っていられないため、1クラスを2つくらいに分けた習熟度別授業を行うようにしているのです。英語や数学は特にこの習熟度別授業が適していると思います。
授業を行う方も受ける方もお互いが幸せです。理解がしやすい。自分が聞きたいところをやってくれる。いいことづくめではありませんか。特に英語などは、得意、不得意の差が高校生になると顕著に出てきます。教科書は同じでもレベル別に解説の仕方、噛み砕き方を変えることにより、生きた授業を展開しやすくなるでしょう。
「習熟度別授業」や「能力別授業」は上を伸ばし、下を救ってくれる。まとめますとこのように言えるように感じています。とても良いと思います。ごく低学力の生徒ばかりだったり、素行不良の生徒が多かったりする場合には、そもそも授業自体が騒がしかったりして成り立たないなどの失敗もないわけではないでしょうが、そこは声掛け、傾聴など工夫をしていくしかないでしょう。また、先生の技量向上も不可欠になりますが、そうした失敗例よりは、成功例の方がはるかに多いのだろうと私は考えています。
以上、学校選びの一つの観点として参考になれば幸いです。